第11号

「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter(2 ―11)

発行:2013年9月30日


「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter(第2期第11号-通巻第23号-)をお届けします。

諸般の事情につき、大変遅くなりましたが、ようやく「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter(第2期第11号-通巻第23号-)をお届けできる運びとなりました。今回のNewsletterは2部から構成されています。

第I部は、原理論領域での最新の研究動向をお伝えするべく、宇野派の若手の研究者を執筆者とする特集を組みました。お届けするのは、以下の2本の《特集ワーキングペーパー》です。

  • 泉正樹著「小幡道昭『マルクス経済学方法論批判─変容論的アプローチ』を読む」
  • 柴崎慎也著「商業資本のもとにおける債務の集積」

必ずしも十分な本数が集まったとはいいがたいのですが、内容は、何れもかなり本格的・意欲的なものです。

泉論文は、小幡道昭氏の近著『マルクス経済学方法論批判─変容論的アプローチ』の第2部「類型論批判」を取り上げて、そこでキーワードになっている「典型」の意味と作り方とに焦点を当てたものです。書評の体裁こそ取ってはおりますが、かなり踏み込んだ読解が豊富な図解とともに提示されており、論文として十分読み応えのある一本になっていると思われます。前掲書は、宇野の「純化・不純化論」と区別された意味での「狭義の変容論」を提起し、資本主義の変容の動力を原理的に論じる方向性を模索したものでしたが、泉論文では、その「狭義の変容論」と「類型論」との関係が解読されております。根本にあるのは、現実の資本主義の変化を捉える上で、いかにして「類型」とは異なる特定性をもつ「典型」を作るべきかという問題です。

柴崎論文は、山口重克氏の信用機構論を主たる検討対象として、信用創造と貨幣預託との同根性を主題的に論じた論文です。銀行信用論では、預金先行説と発券先行説とが長らく対立関係にあったわけですが、柴崎論文は舞台を商業信用論に移して、この対立の相対化を試みているように読めます。さらに同論文は、商業信用における貨幣預託という視点に基づいて、商業資本の下における「事実上」の債務集積までを論じています。これも、商業資本論と信用論との関係について、新たな角度から光を投じようとする意欲的な試みのように思われます。

第Ⅱ部は、《投稿ワーキングペーパー》を1本掲載しています。

  • 櫻井 毅 岩田弘の世界資本主義論とその内的叙述としての経済理論

 

ホームページのNewsletterの目的にも書きましたが、Newsletterへの投稿はワーキング・ペーパーの役割を果たします。ワーキングペーパーの著作権は著者に属しますので、幅広い読者の感想や意見を検討することによって、論文をさらに磨きあげ、学会誌や大学の機関誌で発表することが可能です。既発表論文の転載も受け付けますので、より多くの読者を得るために、「抜き刷り」の郵送の代わりにもお使いください。

このNewsletterは皆様の寄付によって維持されています。一人年間500円程度を目処にご寄付をいただければ幸いです。 詳しくは、ご寄付のお願いをご覧ください。

編集担当 清水真志

 

【特集ワーキングペーパー】

  1. pdficon 泉正樹 小幡道昭『マルクス経済学方法論批判─変容論的  アプローチ』を読む
  2. pdficon 柴崎慎也 商業資本のもとにおける債務の集積

 

【投稿ワーキングペーパー】

 

  1. pdficon 櫻井 毅 岩田弘の世界資本主義論とその内的叙述としての経済理論

 

【一括ダウンロード】pdficon 論文一括ダウンロード用ファイル

 

編集委員:横川信治、植村高久、新田滋、清水真志、吉村信之
顧問委員:櫻井毅、山口重克、柴垣和夫、伊藤誠

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