私の発言

宇野派の研究者に期待すること(要旨)  

                          八尾 信光(鹿児島国際大学)

宇野理論は資本主義の再生産法則は認めるが、その発展法則は認めていないように見えたので賛成できなかった。しかし、①純粋資本主義を想定してその原理を明確化するという方法、②現状分析のためには資本主義の原理だけでなく資本主義発展の段階と類型についての認識が必要だとする見解、③第1次大戦以降の資本主義は次の社会への過渡期と見た方がよいという見解については、その限りで大賛成である。

 両大戦以降における資本主義の変質を促した主な要因は、19世紀以来の資本主義批判と社会労働運動や民主主義の発展、国内外の社会主義の圧力であった。ごく簡単に言えば、資本主義の変質を迫った主な要因は、人間の社会的平等を求める民主主義の発展であろう。それは近代資本主義の下で発展し資本の論理を批判し克服していく要素である。

 資本主義社会の現状を認識しその将来を展望するためには、資本主義自体の発展傾向と同時に広い意味での民主主義の発展過程を踏まえた資本主義認識が必要になる。原理論と段階論の精緻化に努めても、そうした目標に到達することはできないのである。

 よりよい経済社会を実現するためには、それについてのヴィジョンを明確化し、それにいたるプロセスや方策を研究することも重要である。現代資本主義の矛盾や弊害をどのような順序でどのようにして克服しどのような社会を実現すべきかを示す必要がある。

 これらの事柄についても意欲的な研究を進めて頂きたいと期待している。 (07.10.25)