宇野理論の真髄—現状分析への有効性

鎌倉孝夫

報告要旨

 現代の現状に関する科学的分析は,宇野の方法論・理論によって可能となる。ここでは原理論の論証を中心に宇野理論の真髄を示すことによって,その点を明らかにしたい。

  1. 方法上の前提・基礎として
    1. 方法模写について―①資本主義純化の歴史的傾向と純化の限界という現実をふまえた資本主義の科学的解明の方法を確立した―方法論の客観性。②原理論確立の客観的根拠と,原理論による現実(現状)分析の限界——段階論の必要。
    2. 論理による資本主義の歴史性の証明——①生産力と生産関係の対応・矛盾という唯物史観の方法の無論理,②資本の論理の展開から資本の論理を否定する論理はでてこない(自動崩壊論は成立しない),③資本の形態的発展の限度の理論的確定——資本主義の発展の限界——論理の完結性の意味。
    3. 現状分析の課題——①現状の歴史的位置の認識,②現状の現実的特徴——矛盾とそれに対する対応措置,その限界(矛盾の拡大),③対抗論理(「歴史の客観的過程自体を規定する主体的行動」〈宇野〉の状況,方向。
  2. 理論的基準としての原理論
    1. 資本主義経済の現実の主体は流通形態——①流通形態としての商品・貨幣・資本の性格,非自立性,②資本の社会的成立における困難,労働力の社会的包摂における無理(法則の発現=自主的意識的行動の制約),③流通形態としての資本の発展限度——資本の理念の形成とその観念性,その現実具体化は‘擬制’。
    2. 実体論の基本的確立——①人間社会存立・発展の普遍的基礎の明確化,②人間労働の特質,増殖根拠,③人間自体の再生産(生活)——社会の本来の主体形成。 変革対象としての資本主義——①資本主義の根本矛盾——転倒性(物神精),変革対象であること,変革主体の理論的確定,②資本の発展限度=擬制資本であることの意味,その対極としての労働力の・労働の物化,③資本主義の階級性と市民的外観——実体の担い手としての労働者の対抗論理,——資本の形態的発展が何処まで進んだか,労働者の対抗論理の状況と体制統合の方法は——体制統合の困難 → 国家による補完(国家論への射程)。

基調報告全文:宇野理論の神髄(PDFフォーマット)