宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter(第2期第21号-通巻第33号-)
「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter(2 ―21)
発行:2017年8月6日
「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter(第2期第21号-通巻第33号-)をお届けします。今回のNewsletterは、「塩沢由典氏のマルクス価値論批判によせて」という特集テーマのもとに2本の《特集ワーキングペーパー》を掲載しています。
第2期第20号「新しい国際価値論とダイナミック産業」では、「この特集をきっかけとして、原理論、中間理論、現状分析の関係をどのように再構築し、どのように理論化していくかについて、活発な議論が展開されることを期待しています。積極的な投稿を歓迎します。」と呼びかけました。塩沢由典氏の「現代資本主義分析のための原理論:現代古典派価値論と宇野理論」のマルクス価値論批判に対して二つの論文が寄せられました。
第1論文は小幡道昭氏の「価値実体論から価値内在説へ-「実体論の残滓」説によせて-」です。価値論を客観価値説のうちに回収すべきだという消極命題と商品には価値が内在するという積極命題で構成される小幡氏の価値論を、塩沢氏は「実体論の残滓」と批判し「価値実体論」を捨てればよいと論じた。これに対して小幡氏は、スラッファの客観価値説の問題点として、「貨幣の不在」と「賃金決定の白紙化」を取り上げ、価値内在説の必要性と賃金論の必要性を論じた。第1に「価値の内在性」によってはじめて「種の属性としての価値」が明らかになり「在庫と貨幣の実在する市場」を分析できるようになる。第2に資本のもとでの労働過程、資本の外部における労働者の生活過程、そして両者を結ぶ労働市場、これら全体を理論化して賃金決定を説明する必要があると論じた。
第2論文は江原慶氏の「価値の内在性と価値形態論の射程-塩沢由典氏のマルクス価値論批判によせて-」です。江原氏は、マルクス経済学の価値論が、塩沢氏の「現代古典派価値論」に解消されてしまうとは思わないとして、価値内在説の観点から関係主義的な価値形態論に対して表現主義的価値形態論を展開し、表現主義的形態論によって貨幣の実在する市場の基礎理論が形成できると論じた。「現代古典派価値論」の欠陥として、貨幣の存在が欠落しているため、国際通貨体制の分析軸としてはほとんど無力であるとした上で、価値形態論を踏まえた国際通貨体制論を、マルクス経済学の今後の課題として追究すべきと指摘した。
9月発行予定の第2期第22号では、「国際価値論」を特集する予定です。塩沢氏の「新しい国際価値論」に対する賛否両論が活発に投稿されることを期待しています。投稿の締め切りは8月末です。
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